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7.222024
読んで受け取った、父の想い
【父のエッセイ】
仕事一筋で、家では無口だった父。
曲がったことが大嫌いで、子どもの頃は悪さをするたびに厳しく叱られた。
大きくなるにつれて言葉を交わすことが減り、離れて暮らすようになるとほとんど話すことはなくなった。
そんな父が定年後に楽しんでいたのが、文章を書くことだった。
もともと日記をつけるのが習慣だったが、退職して時間ができると自由にエッセイのようなものを書いていたらしい。
ある年、正月に帰省した時に父から本を受け取った。
今までコツコツためていたお金で自費出版をしたと言う。
自分の本を作りたかった、夢がようやく叶った、と。
開いたページの中には、生き生きとした言葉。
今まで聞いたことのなかった仕事でのエピソード、日々の小さなこだわり、幼い頃の思い出などが、軽やかなタッチで描き出されていた。
この本がなければ父はいつまでも無口で厳しい父だっただろう。
本を読んで新たに知った父の一面。
今まで知らなかった父の人生。
今、知ることができてよかった。